弁当の注文である。
配達先は、国のとある農業研究機関である。

その研究機関は敷地が広い。
それだけではない。あちこちに研究棟がある。
今までも現場の研究棟から配達を依頼された。

そのほかにも指定の野菜を使用した弁当や仕出しの注文がある。
なんでも新しい野菜や穀物を利用して料理してくれと言う注文だ。
どうやらお客様と新品種を試食するような感じだ。

今回の注文は現場の研究棟だ。
麻子様が聞いた注文表には

「B研究棟」とある
いつもはAとかBとかCなどと言うような呼び方をしていない
あの人がいるあの部屋だとか、
あの人のいる赤ちょうちんのぶら下がった部屋だ
(昔、実際にあった。赤ちょうちんがぶら下がって部屋の冷蔵庫にキンキンに冷えたビールがあった)
朝から呑まされた。断ったが、断りきれなかった、いつの間にちいさなコップが…大きなカップに替わって…よだれが…)

そんなので立て看板を見ながらB棟へ行った。
注文表にはB棟の玄関で…とある
誰もでてこないので携帯を鳴らした
携帯を鳴らしても誰もでてこない

おかしい

しかたなく弁当を降ろして引き渡す準備をした
電話がかかってきた

「…棟の玄関で待っているのですが」
「B棟の玄関にいますが…」
「こちらからは見当たりませんが…」
「こちらもみあたりません」
薄暗く広くない玄関である。
”おかしい”

ひょっとして

「なに棟ですか?」
「…棟です」
「デンマークのDですか?」
「えっ?なんと言いました。こちらはデンマークではありません」
「ビルマのBですか?」
「同じアジアですが、ビルマではありません」
「いや…その…アルファベットはなんですか?」
「”D”です」「そうですか、”B”にいますが見当たりません」

とトンチンカンな会話が続いた。
昔、電話で会話をするときに決まった言葉がある
要するにABCDEFGを電話などで言葉で表現するときは間違えないように

アメリカのA
ビルマのB
チャイナのC
デンマークのD
イングランドのE
フランスのF
ジャーマンのG
スケベのH(嘘)

と言うように前に国名をつけて言うということを、教えられた
今はFAXやmailがあるから、そんな言葉が死語になってしまった。