店の陳列棚を整理していた。
ふと見上げると、オバァちゃんが一人
スクッと立って、こちらを見ていた。

 

あれぇ〜何処かで見たことが…
とりあえず「あっ!どうも…」

こういうときの「どうも」という言葉はありがたい
とりあえず時間を稼いで…
誰か思い出そうとするが…

笑っているオバァちゃんは、黙っている

沈黙に耐えきれなくなって
「久しぶりですね。どこでお会いしました?
お名前は…」と言うと
「〇〇です」
頭の中が走馬灯のように回転する

「〇〇」は昔いた。日本一大きなバスケットの選手だった。
しかし、眼の前の「〇〇」は小さい。年齢もいっている。。
違う!
「〇〇」は西日本の県名だ。
違う!

そうだ!思い出した
刻まれたシワの奥底に、あのオバアちゃんの顔が見えた。
土手の上の道路を信号無視して、大きな道路を渡って歩いてくるオバアちゃんだ。
そして時折、肥料を配達して、隣の空き家の庭を耕していた「〇〇さん」だった。

そう言えば…
このところ5年ぐらいになるだろうか…
来ない。

「久しぶりだね〜。どうしていたの?」
「一人暮らし」
「畑は…」
「もうとっくにやってないよ」
「バスカードを使って生協に買い物に行っている」
「それは良かった。今日は?」
「バスカードを買いに来たの…」
「幾つになるの」
「もう90の坂を超えた」
「じゃ〜昭和2年!うちの母と一緒だ」
「もう、すっかり足が弱って…」
「しっかりしているよ」
「頭もボケて…」

と言いながら手すりにすがって歩いて登っていった。

歳を重ねて、老いは平等にくる。

しかし、そのボケ方は大きな違いがでてくる
それはいったい、どういう生き方で差がつくのだろう

母はいつも言っていた
「書道は指先を動かすから、ボケないのだよ…」
しかし、ボケた。ひどく…