もうそろそろ現れて一週間は経つ。
定休日も来る。
雨が降った日も来る。
いつの間にか帽子と傘を持っている。

あいかわらず「たまご定食」と言って、朝早く食堂に座り
ゆっくりと30分以上かけて三杯たいらげ、納豆を追加発注して、途中で漬物を何回もお替わりして、お茶を飲み、トイレに行き、小一時間かけて食事を済ます。
その後は朝定食についているコーヒーを、テラスでゆっくりと飲み干して、じっとしている。

魔子様に「大盛りの丼でなく、普通の茶碗で出すように…」と指示をした。
魔子様は言う「あんた嫌いなんでしょう」

好きなわけはない。
「金をはらって貰えば、全て客か?」と思う

魔子様は、均一である。
誰にも優しい。誰にも同じ態度で接する。
(ただし小生以外だが…小生には、ことのほか厳しい(泣)
パチンコ狂いの白髪の老婆が、バス待ちに利用しても、お茶を勧め。話をする。
”バスに乗り遅れた”と言われて、タクシー代を貸す。
”なかなか返してくれない”と、泣きつくが…

”せいじ”の大盛り丼も「何回もお替わりするので、手間がかかるから…」と言う
「他の客の手前、特別扱いをする必要はない」と言って普通の茶碗に替えさせた。
それで三杯食べた。
ようするに、小さくても、大きくても三杯と。決めているようだ。

しかし、一日店にまとわりつく。
店内にいないときは、玄関脇のベンチで発泡スチロールを枕に寝ているか…
上の道路に上がる階段の途中に座り込んでいるか…
コンビニにビールを買いに行っているか…
そして、3時過ぎには消える

「悪女の深情け」という言葉があるが…
好意を持って店を利用してくれるのは、有りがたいが…
店の趣旨や、雰囲気にちがう形で利用されるのは、むず痒い。

 

昔、銀座で働いていたことが有る。
昭和通りに面した銀座8丁目のビルである。
真ん前に銀座第一ホテルが見えた。シティホテルだろうか…
高級ビジネスホテルという格付けだろうか…
よく出かけた。
時折、安酒屋で呑み疲れた翌日の午後、ホテルのロビーで昼寝をしようとした
当然、背広を着ていた。書類を開き、ビジネスマンが会議の前の下調べ風に装った。
すぐ眠気が襲ってきて、カクリとクビが落ちた。
途端に後ろから肩を叩かれて目が覚めた。
ふと見ると、誰もいない。
おかしい、何か通りすがりの人のものがあたったのだろうか…
また眠気が襲ってきて、カクリとクビが落ちた。
途端に後ろから肩を叩かれて目が覚めた。
ふと見ると、誰もいない。
おかしい、何か通りすがりの人のものがあたったのだろうか…

それが三回続いた。
これは、ホテルマンに監視されている。
たぶんホテルマンは、ホテルの雰囲気にちがう感じを持ったのだろう。

 

べつに客に危害を加えるわけではない
金は、きちんと払う。
着ているものは、いつも同じだ。
ただ一日、じっと店内をみて、じっとしている。
うつろな目でときおりテラスでタバコを吸っている。
じっと次の食事時間を待っている。