火曜日は、定休日である。
すこし暑かった。
早く店の仕事を片付けて、ビールを呑みながら自宅で書類の作成を…
と厨房の段取りをして…
ひょっとしたら”せいじ”が来ているか?
と思って、北側の玄関を覗いた。
玄関のガラスには「定休日」と、ご丁寧に二枚も貼ってある。
”せいじ“は、やはり玄関わきのベンチに腰掛けていた。
近所の人が
「夜中も街中を歩き回っている」と言う

昨日のご飯の食べ方といい、その後の店のうろつき方といい
食堂で飯が食え、店の中は日陰で休めて、お茶はある、トイレはある、時間をつぶすには、当店はもってこいである。

お金は…
レジで財布を開いたときに「万札」がちらっと見えたと麻子様は言う
当座の金は、有るのだろう

しかし、この暑さは…台風が接近しているという…
家はたしか…玉山と、言っていたような…
玉山の家は、どうなってしまったのだろう

玉山へ帰るのに…
以前は車で来ていたが…車はどうなってしまったのだろう

他人事ながら心配である
と言って店を開けて食事をさせるほどの時間的・金銭的・心理的余裕が無い
”せいじ”は、店の外のベンチと松園に続く階段とを行ったり来たりしながら
一日中 日陰を探し、座って汗をふいていた。

そのうちに見えなくなった。
定休日は、台風の雨が降る前の蒸し暑さを残して過ぎていった。

翌日魔子様に
「ひょとして朝早く、”せいじ”が食事に来るかも…」と噂をした
8時前には来なかった。
前に「朝食は8時からだ」と言ってあるからだろうか…
やはり、やってきたのは8時半ごろだった。
「たまご定食」と言う
もくもくと大盛り二杯を、たいらげて、
「納豆を…」と100円を出し単品でとり、最後の一杯を仕上げた。
朝定食のコーヒーをゆっくりと飲み、テラスでタバコを吸った。
それから前回と一緒だが、ちがうのは客が多かったので自分の落ち着いて座る場所がなかった。
店内をウロウロして、隅に隅にと席を求め、ついには店の外に出ていった。
しかし、それもすぐ戻ってきた。ランチタイムである。
注文したのは「中華ざる」だという
えっ!それで持つのか?

「中華ざる」というメニューは、盛岡独自のメニューである。
ようするに中華麺を湯がいて、ざるそばのざるに盛り、ざるそば用のタレで食べるのである。
盛岡の人は、他所にないメニューだと知らない。
盛岡以外の人は、「つけめん!のようなものだ」と勘違いする。
盛岡冷麺や、じゃじゃ麺、寄せ豆腐といい盛岡の食文化は奥が深いのである。

 

中華ざるを食べ終わったせいじは、また隅っこに座ったままじっと座っている
立ち上がって、入江くんの玄米せんべいを買い、お茶をすすってボリボリ食べていた
その後、店を出ていった。
3時食堂閉店を知っているのだろうか…

別に悪さをするわけではない
金は払う。
ただ、いつも一緒のみなりで…
それに、風呂も入っていないのか…
言葉は、もつもつと聞こえないように話し
店内をウロウロして商品を手に取り、自分が飲み食いする商品は買う。
営業を妨害するわけではない

ひょっとしてこんな人が都会のデパートには溢れているのでは…
定年になり、どこにも行先のない…家に一人でいても…
”せいじ”にとって野菜畑は…
田舎のデパートなのだろうか…

団塊の世代の定年後のすがたを、想像する