「なにしてんの?」
そのおばはんは、声をかけてきた。
”だれだ?”
店の道路際でのぼりを建てようと悪戦苦闘しているときに
そんな声が、かかってきた。

「ひなたぼっこしてるんかと思ったわ」
和歌山のおばはんである。
あいかわらず不意に現れる。
和歌山から旦那と一緒に月山、鳥海山を登って道の駅に泊まりながら盛岡までやってきたという。
山女である。

40年の付き合いである。
東京から大阪へ転勤になって配属された課の”おつぼねさま”だった。
と言うか…”ぬし”だった。

当時、和歌山から大阪御堂筋まで二時間かけて通ってきた。
通勤電車で、口開けてヨダレ垂らして寝ているという噂を聞いた。
真偽は知らない。

口から先に生まれた。と聞いた
真偽は知らない。
話しだしたら、止まらない。
人が話をしていても、割り込んで話をする。
上司が訓示をしていても、知らんぷりして話をしている。
というか聞いていない。という
真偽は知らない。

40年前、その課には二人の女の子がいた。
先輩の父親が事故で危篤になり、
全員で神社にお参りしたが、亡くなった。
一人の女の子は
「苦しまんように、はよ天国に連れて行ったんや」と言った
和歌山のおばはんは
「なんや、この神さん効けへんやないの?」と言い放った。
なるほど宗教心とは、こういうことか?と勉強した。

そんな山女と旦那を連れて天峰山へ行った。

三陸の被災地の復興をみながら和歌山に帰るという

別れ際に握手して言った。

「葬式には、行けへんで!」
66歳と67歳の久しぶりの再会の分レの挨拶である。