店を留守している間に、酒を置いていった若い友人がいる。
誰でも良い。
酒さえ置いていけば…

しかし、見慣れないラベルだ。
「御礼」と添え書きもついている。
読んでみると「五百万石」で作った酒だという。

酒米(酒造好適米)は、いろいろある。
そのうちで一番有名なのは、山田錦だ。
滝沢で武田哲君が作っているのは美山錦だ。
その他有名なのは、「五百万石」「出羽燦々」「雄町」と続くが岩手では作られていない。
その「五百万石」を田村和大くんが岩手で、震災の年から6年かけて作りこなしたという。

その他に「飯米」「酒米」ともに利用されている米もある。
石鳥谷で高橋亮介くんが作っているのは「亀の尾」である
西根で渡辺晴久君が作っているのは「陸羽132号」
米は適地適作でないと実らない
まして酒米と言う制約(大粒・心拍など)の多い稲は、岩手ではほとんど無理である。
山田錦の北限は、県南の一関だという

陸羽132にしても亀の尾にしても、以前は主に飯米として作られた。
飯米が自給できないのに、酒を作るなどというバカげたことはできないのである。
と一般的なことをいう。
実は隠れて作っていたのである。

まして岩手は日本三大杜氏の中で最大の杜氏集団南部杜氏のふるさとである。(越後杜氏・丹波杜氏)
岩手は厳しい寒さから酒米が作れず、まして冬の仕事が無いために全国に散らばって酒造りをしたものとおもわれる。
以前「岩手は有名な酒がない。いい酒などないだろう」と言う人がいた。
実は全国に散らばった南部杜氏は、各地の有名な蔵元に入って作りこんでいたのである。

その彼らが春になって帰ってきて米を作っていた。
そして、歳をとって出かけられなくなったら、隠れてどぶろくも…
また岩手には小さな酒蔵がいっぱいある。
そんな小さな酒蔵で作られた南部杜氏の自慢の酒は、量が少ないために全国区にはならないのである。

そんな岩手に新しい美酒が加わった。
 盛岡の新しい風 「平井六右衛門 盛流」(菊の司酒造 醸し手平井佑樹)

大ぶりのカクテルグラスに、長芋の糠漬けを添えて…

さわやかな春風の薫りがした。

多種多様な豊かな文化は、南部の持ち味だ