「オトウサン!ナンデ、ソンナニ、ヤセテルノ?」
厨房の外から、声がかかった。
よく見ると大きな男である。

「オウ君!」
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丸坊主だったが、髪が生えて、腹も大きく…
太っていた頃は丸坊主の二人で親子とよく間違えられた。
中国の留学生王大超君である。

 

「いくつになった?」
「猿ドシデス。38デス」という

 

太っていた頃だから、もう10年以上も前だ。(平成15年ごろ)
岩大の先生の誰かに頼まれたのだろうか?
「留学生をアルバイトで使ってほしい」と…
やってきた
初めての学生アルバイトなので心配をした。
それも留学生だ。

しかし、よく通ってきた。
授業がない時間は、毎日自転車で、あの急坂をこいで登ってきた。
雨の日も風の日も…そして雪の日も…

当時は留学生は授業料無料の制度があった。
しかし、彼は仕送りがなかったから、生活費を稼がなければならなかった。
昼のまかないは蕎麦だったが、彼は名前通り超大盛りを、ぬたぬたたべた。
ヌタヌタというのは、丼の中に顔をツッコミ、ぐちゃぐちゃに噛んでいるのである。
「日本のコトワザに”郷に入っては郷に従え”というのが有る
そばは、噛まずに飲み込むのだ!梅さんを見ろ」
と言うと梅さんは「ずるずるずるっ〜」とすすってみせた。
一生懸命にやろうとするが、いつの間にかもとに戻る
小さな頃の習性というのは、なかなか治らないものだ

そして野菜や花の苗に水やりを頼むと
「いやだ」という。
中国では「水やりは、女の仕事だと言ってやらせてもらえなかった」という
「ココは日本だ」と言って無理やりやらせたが
彼の心の葛藤は、イカほどのものだったのだろうか…

しかし、よく言われたことをハイハイと聞いてやったが
当店は大学のセンセイがよく来る
そうすると彼は近寄って、すぐ喋りはじめる
働いているのか、ここでまた勉強しているのか?わからん

中国のこともよく喋ってくれた
「トマトはヘタの有る裏を見ると店の人に怒られる
青いところを赤く塗って売っている」
「パン屋は同じところに、同じパンがずっと置いてある
腐らないカビも生えない、恐ろしくて食べられない」

そして自炊していた彼は、日本のスーパーに行ってニンニクを探す
中国産しか売っていない。
仕方がないので、それを取るが…
入り口に青森産のニンニクが売っていたので即交換した
「中国のものは食べられない」と言って

そして今回、彼は農業研究センターのようなところへ就職し「共同研究で日本にやってきた」という。
今専門は「有機農業」だという

そして最後に「オ父サン!小粒ノ大豆!アリマセンカ?」という
「中国ノ大豆ハ、ホトンド遺伝子組換デ食ベラレマセン。自分デ栽培シマス」という