「早く行くよ」の魔子様の指示を聞きながら靴下をはいた。
朝の六時である。今日は弁当が二件もある。
それも大量の注文だ。
早めに出る準備はしているが、いつも魔子様が早い。
なんせ起きたら、顔だけ洗って出る準備完了である

こちとらは朝食の準備と朝食と後片付け、認知症の母親の挨拶とうとう
目覚めてから少なくとも二時間はかかる

着替えて靴下を履き終えて足元を見ると
カーペットの上に「味噌汁」がこぼれている
”おかしい…!味噌汁など、机では飲んでいないのに…”
”まてよ、溶けたチョコレートか?”と思ったが、酔っ払ってチョコレートを食べた記憶もない

足を上げてみると…
靴下がどす黒く赤い。それどころか滴り落ちている。
”なんだこれは?”

”やばい!出血だ!”

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以前も起きた足のくるぶしからの出血である
くるぶしに有るかさぶたが、靴下をはいた瞬間にとれた。
というよりも栓をしていた部分が剥がれて、中の血液混じりの体液が流れてきた
だろうと思った

すぐ風呂場に駆け込み、靴下を脱いだ。
まるで水道の蛇口のよう勢い良く五センチも飛び出す
みるみるうちに風呂場はどす黒く赤く染まり、勢いは止まらない
そういえば夏場所で「いきおい」と言う力士がいた?連勝しているのか?

多分溜まった血液混じりの体液だから、そのうちに止まるだろうと眺めていた
止まらない。
いや!ある程度流れでてくれば…
いきおいは、止まらない

もうちょっとだ…
最初に出てきた血液が、風呂場の隅で徐々に固まってきた
だいぶ立ったが、勢いは止まらない

風呂場の床は、どす黒く覆われた。
やばい、やはり止血しようか…
その間、五分ぐらいだろうか…
魔子様を呼んでガーゼを貼り付け、バンソウコできつく足首からぐるぐる巻きにした

さていつもの病院の救急センターである。
今回は早朝だった。
だれも、診察を待っている人はいない。
警備員も事務も看護婦も「夜勤明け」と言う眠そうな顔をしていた
そしてスローテンポで、面倒くさそうに、状況を聞いてきた
”おい!血が…血が…止まらないのだ!”と思ったが、ぐるぐる巻きにしてあるので血はにじみ出ているぐらいである
前回は、滴り落ちて病院の廊下にくっきりと血塗られた足跡が、点々と…あった。
行った瞬間、大勢の人に囲まれあっという間に、あちこちを抑えられて止血をされた
股間の鼠径部を抑えた指が肉に食い込んで、痛いこと痛いこと
抑えこんだ若い医者が鬼のように見えた

今回は、一人だった
出てきた若い医者は、診察室の椅子に座って、型通りの診察前の問診をしながら
”業務事故ではないか?”
と言う胡散臭い目で見ていた。
”早く止血しろよ”と思ったが、のんびりと病歴を聞いてくる
手術の履歴を聞いて驚きなながら、徐々に病院との関わりを聞いてくると少し驚いた様子だ
なんといっても常連だ(?)

巻いた包帯を解くと、飛び出すかと思った傷口はふさがっていた。
そこへ看護婦が二人。
胸の名札を見ると、どこかで聞いたような名前だ?
「ひょっとして来週弁当を頼んだ人?」
「そうなの!来週の弁当間に合うか心配で見に来たの?」

若い医者は驚いて「お弁当屋さん?」