「どん百姓」という言葉があるのなら、彼らに送りたい。
と彼に言った。彼は苦笑いをしていた。
彼は高校の時、生徒会長をしていた。
小生は、体育会系のノンポリ派だだから、家と教室とグランドの三角形を三年間うろうろしていた。
だから彼とは話をしたこともない。おまけに彼は、病休で年が2つも上だ

小生が故郷に戻って農業をやるようになって、彼が近くになった。
彼は地元の農業や政治の名士になっていた。
そんな彼に「”秘伝”と言う青豆をやらないか?」と声をかけた

当時、あるグループから”秘伝”を買い求めていた。
納豆に利用したり、新しい企画「秘伝一家」に豆腐や味噌、醬油などを企画していた時だった
そのグループは、枝豆として売り、売り切れないものを大豆として小生のところへ持ってきた
その内に「味噌を作りたい」というので小生の加工場を教えてあげた。
彼らは、大量に作り、町内の役場やイベントで安く売り始めた
彼らにとって大豆が商品で、味噌は余計に出来た余り物なのであるが、量を売りやすいのは味噌の方である
ある年、秘伝が不作の年にであった。
そうすると突然、契約していた秘伝を出荷しないと言い始めた
「種豆が足りない」のだという

「種豆は更新したら!とりあえずこちらは契約だから…」
と言っても、種豆を更新する種代金が高額になる
だから契約は破棄して、自分たちの種豆にする、という話だ。
「あきれた。これでは契約は出来ないではないか?」と言っても、平気な顔だ。

あきらめた。
そんな時に転作に大豆を栽培していた、元生徒会長に声をかけた
「”秘伝”と言う青豆をやらないか?」
当時は白大豆は補助金がでるが、民間育種の青豆は、国から補助金が出なかった。
山形のダダッ茶豆は、茶豆だが県が奨励して補助金を出しているのだろう。だから生産量が多い

白大豆は、国が責任をもって育種開発している。そのため補助金を出して奨励しているし、栽培研究も盛んである
青大豆や黒大豆・茶大豆などの色豆は、育種は民間に任せてあるので、民間の希少価値の”技”であるが、収穫量は少ない

収穫量も少なく、補助金も出ない。そんな青豆をやらないか?と言う誘いに彼は生返事だった。
ただ枝豆としては旨い。
大手の種苗メーカーが「日本一の香り枝豆」として販売を始め、その秘伝を利用した大豆加工品が色々と出始めた。

そうしてるあいだに彼は「種が欲しい」と言ってきた。
最初の年「ずいぶん種が高い」と言い。播種時期がずれてものにならなかった。
二年目は、出来た豆がほとんどB級品。
そして三年目、彼は「40センチの播種機を買った」と言ってきた
秘伝は、覇種間隔が広いのである。つまり大きく枝を広げた状態をイメージして間隔を広く取って植えるのである
狭く植えると最初は見た目が良いが、後半に枝が伸びた時に葉っぱに日光が十分に当たらないので光合成の量が少ない。
そんな大豆専用の播種機が40万もしたと言う

ちょっと心配したが、彼が本業してる稲作は息子に任せて、自分はこれからの大豆生産にかけたようだ。
それが三年目にようやく実った。

持参した秘伝の袋を開けて、小生は言った
「この袋だけ良い豆を集めて詰めたのでは?いくらする?」
「いつもの値段でいいよ」と言う
「いや、それでは申し訳ない。この秘伝ならどこに出しても喜ばれる秘伝だ」
通常、小売業で買い求めている秘伝は12000円だが、8500円で良いという
グッときた

通常なら屑大豆だった二年目のB級品を8500円で買い支えたことを
彼は恩に来ているのだ

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