「配達だよ。すぐそば…」と言われて、暗くならないうちに…
と出かけた

呼び鈴を鳴らすと
「は〜い」と元気な声が聞こえる
廊下の奥から片足を引きずるようにして歩いてきたオバァちゃんは
「あら。あんたも元気そうだね」と小生を見て
「おばあちゃんだって、歩き方がスイスイだよ」

 

いえ、そのね、これでも左半身が麻痺して全然感じない。
この玄関のそばの本棚をみていたら、急に記憶がなくなって、気がついたら階段の下に倒れていた
タクシーを呼んで近くのかかりつけに行ったら、もう即、安静入院で10日も…
医者は言わなかったけど。私が忘れたのかもしれないけど、あたったんだよね。
ほら!こっちの感覚が全然ない
息子が秋田にいるのだけど、”秋田に来い”と言われるけど、知らない人ばかりのとこへ行っても…。
それにね、お嫁さんの家庭が母ひとりで、面倒を見ないといけないので…

私は双子なの。もう一人は盛岡にいるし、姉も近くにいて、だから倒れた時には盛岡のホームのほうが…
小さいころ生活保護を受けていて、兄に連れられて支給金を貰いに行ったら19歳以上の子供がいる家庭は対象にならないと急に打ち切られて、兄がお金がないからと言って私を売血に連れて行って、そこで気を失って…
17歳の娘が、周りの人のすすめで日雇いの土木人夫で日銭を稼いで生きてきました。
母が病気で面倒を見ないといけないので、そのころは中卒の集団就職で東京へ行ったのだけど、
私は盛岡に残って…妹だけ東京へやって、そんな家族だから姉と妹の居る盛岡にずーといたい。
近所の人が雪かきや、植木の選定に声をかけてくれるし、
ヘルパーさんは、毎日のようにくるし…
何かあっても、大丈夫だから…

 

「はい2660円、財布から、お金が指でつまめないの?じゃ〜取ってあげるよ」
「おばあちゃん、お米5kgもあるよ、持てる?」
「台所まで運んであげる!あっ!このバナナも…」
「米びつに入れてあげるよ。重いから…
注文は5kgでなくてもいいからね。3kgで…
毎日のように配達してあげるから…
えっ!ナシが好きなの?ナシ今。有ったかな?」

夕暮れの配達が、いつの間にか暗闇に変わっていた。

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