年末は忙しい。
忙しいというのは、「心を亡くす」と書く
本当に心を亡くしてしまいそうだ

集荷と配達であちこちを飛び回り、店に帰ってくれば年末の挨拶である
そうだ、年賀状も書いていない

一体これで正月が迎えられるのであろうか?
迎えようと迎えまいと、正月はやってくるのである(泣)

忙しい中、配達に行った
パッパッパッと三軒ほどまわって、いつものおばぁちゃんのところへ着いた

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いつもボタンは押さない。扉を開けて叫ぶ
「ごめんくださ〜い」
しまった!
何時も開いている居間と玄関の間の扉が、閉まっている
中からテレビの音が…

腹の底から叫ぶ

「ごめんくださーい」

中からテレビの音だけが聞こえる
仕方がないので玄関の呼び鈴を強く押す
仕方がないので玄関の呼び鈴を二回押す

中からテレビの音だけが聞こえる

まさか無断で上がっていく訳にはいかない
ガラッと扉を開けて顔を見たとん、心筋梗塞で倒れるかもしれない
いや泥棒よけのバットで殴りかかられるかもしれない

しかし、どうやったら気がつくのだろうか

テレビの音か聞こえない瞬間に
もう一度腹の底から大声で

「ごめんくださぁ〜い」

中からテレビの音だけが聞こえる

万事休す

そうだ、電話だ!
電話番号は登録していない。
仕方がないので店に電話をする
「おばぁ〜ちゃんに電話をしてくれ
”今、玄関に配達に来ている”と…」

数分後、電話の呼び出し音が聞こえないのに
テレビの音声と一緒に、おばぁちゃんの声が聞こえる
「あっ、そぉ」と言っている
そして居間の扉が開いた

耳の聴こえないおばぁちゃんと、声の出ない配達員の忙しい年末の話である。