胃カメラを呑んだ
久しぶりである
「チョコレート味にするか?」
「メロン味が、いいかな?」
などと、こちらの意向は問わない。
ひげ面の医者は、どんどん太いひも状のカメラを突っ込む
何回と胃カメラを飲み込んだベテランの小生も、
「ゲェ〜ゲェ〜」
と涙を流しながら、モニターをみた
どぶそうじに突っ込むブラシのように医者は、出し入れしている
モニターは、喉から狭い手術跡、胃袋まで映しだされている
きれいな内臓だ、我ながら褒めてあげたい
薄桃色のきれいな肉のトンネルに、ところどころ赤いものが流れている
そうなのである。
最近つばを吐くと、血が混じっていることが多い
これは、やばい。
”食道癌が転移したか…”と心配していたのである
医者は、ずるずると胃カメラ引き抜きながら
「胃酸が逆流して粘膜を損傷し、飲み込む時に傷つけるのだ」と言う
そして「薬を出しておくから…」こともなげに
食道には胃酸の逆流防止の弁がついている
それを取ったため、胃酸が逆流するのである
飯を食う時も丼を上げて食べないといけない
人と出会っても、お辞儀をしてはいけない
だから寝るときも頭を高くしないといけない
だから何時も人を見下す態度を取らざるをえない
石原慎太郎みたいだと言われるが、本当は石原裕次郎と言われたい
しかし、医者の見立ては正解なのだろうか?
ひょっとして誤診ではないか
ひょっとして専門外の咽喉癌や乳癌ではないか?
いやぁ〜もっと重篤な子宮癌では…
そんな不安を解消するために保険に入っていた
しかし、よく考えてみたら、そんなんで不安の解消になるのか?
残されたあとの人のことを考えて…と言いながら
もうかる保険会社の餌食になっていくだけではないか?
保険の伯母さんに言った
「不安を煽って、金をむしり取る因果な商売だね」と…
社会に必要な仕事は、儲からないのである。