若い友人が、今年就農をした
以前から「農業をしたい」と言っていたが、一昨年、一念発起をして勤め先を辞め有機農家で研修をした。
そこへ国から”新規就農に年間150万の助成金を出す”という政策があり、それも後押しをしたようだ

その若い友人は、夢があった。
春夏秋はコメを作り、冬は酒蔵で杜氏として働き、自分の米で作った酒を呑みたいと言う
新規に就農した今年は酒蔵(さかぐら)と契約し「亀ノ尾」を収めることにしている、と言う

「亀ノ尾」は明治の頃の育種で、陸羽132号が子供でコシヒカリ・ササニシキなどが孫である
良食味の米であり、酒米としても好適種であるという

そんな若い友人が、今年はじめて借りて作付した田んぼを見に行った

驚いたザル田のヒエ田であった。
二町歩を借りて一町二反作付をした、と言う

水が殆ど来ないと言うよりも、来ても浸透して無くなるという
水がなかったら陸稲(おかぼ)である
田んぼの水には、大きな役目がある
まず一番に根っこの保温である。そして雑草の抑制である
冷害のときに水をためて根を保温してやれば、そんなに被害に合わない
そのために、夜に田んぼに水を入れ、日中の陽光で田んぼの水を温めると言う水管理が毎日必要なのである
そして水があると雑草は酸素不足で生育ができない

そんな重要な田んぼの水が抜けるのである
水が抜ける田んぼを「ザル田」と言う
田んぼに水が入ってこそ水稲であり水田なのである

貸した地主は「代(しろ)かきが下手だから…」と若い友人に言ったという
田植え前に行う代(しろ)かきと言う作業は、水田の土をとろとろにして、稲を植えやすく、根を貼りやすくする
そしてもうひとつは、とろとろの細かくした泥が抜け穴を防ぐ役目がある
一枚の田んぼを均一に代(しろ)をかくには、熟練を要する
「代かきが苦手だ」と言う農家はいくらもいる

しかし、この田んぼは代かきの問題ではない

 

田植えが終わってそれからヒエが出てきたと言う
”ヒエは一生たたる(三代たたる?)”といわれる
水田はヒエとの戦いだといっても過言ではない

ヒエと稲は、外見は一緒である
田んぼに入りたてのとき(40代初め)は、区別がつかなかった
ヒエと思って稲を抜いたり、稲と思ってヒエを抜かなかったり
ヒエは、同じイネ科の植物なのである

なぜヒエをそんなに敵視するのか?と思うだろうが
稲よりも成長が早いのである
田植えという移植作業は、なぜするのだろうか?
田植えという作業は、雑草の抑制のためにするのである
稲を植えてから、水を張って雑草を抑制するのである。
それがヒエは、水面からちょっと葉先がでると、あっという間に稲を追い越し
田んぼの肥料を先に吸ってしまうのである
だからヒエ田は収量が激減するのである

 

隣の田んぼは、ヒエが生えていなかった
たぶん貸した地主は、近くの工業団地に務めている兼業農家というが、
ほっといて手に負えなくなって、貸しているのだろう
若い友人が借りる前にも、他の人に貸していたと言う
その人は、ほうほうのていで逃げ出すように辞めていったと言う

地主から「長期の契約を…」と言われたらしいが
「何が起きるかわからないから三年契約にしてもらった」と若い友人は言う。賢明であった。
しかし、この田んぼは、三年でものになるようなシロモノではないだろう

大体が良い田んぼは、親戚が借りる。
その次に良い田んぼは、同じ部落の人が借りる。
その次に良い田んぼは、その村の人が借りる。
そして誰も借り手が居ない田んぼは、その現状を知らない新規就農のひとが借りる羽目になる

彼に言った
「多分これをやめてもいい場所は当たらないだろう。
三年間24時間365日、必死にヒエ退治を考えて様々な方法を試してみることだ
そしてヒエ退治はまかしておけ、というぐらいやったら、これからの人生に絶対に役立つ」

三年間の彼の取り組みを見ている人がいるだろう
そこからしか新しい展開は見えてこない