その男は、饒舌に語りかけてきた
「この辺に陶芸をやっている人は…」
数日前の掃除をしていた朝である

そういえば山の上で焼き物をやっている人が居た
その人のことかと
「この坂道を下って信号を右に…」と教えてやった

その翌朝、花苗の整理をしていた朝。大きな声で
「昨日はどうも!会えました。Kさんに!3時間も話をしてきました」
前日に道を聞かれた人だ
道を尋ねて来る人は多い。
一々、顔など覚えていない。
思い出すのに間があった。

彼は、べらべらしゃべり始めた。
どうやらKさんと”話が合った”と言う事を一生懸命言っているが…
「自分もフランス料理のシェフをやめて陶芸をやっている」と言う。
もう小生と一緒ぐらいの年である

一生懸命パンフを見せて、図録というのだろうか、
自分の作品集やあちこちでやった秋田や青森の展示会の案内状などが次から次へと出てくる
結局、彼が言いたいのは「岩手で初の展示即売会をやらして欲しい」と言うことらしかった
「テーブル一枚のスベースで良い」

案内状や図録など様々なモノをみると、ここまでだますためには資料を作らないだろう
と思うくらいの様々なパンフレットを見せて言う

ちょうど食堂のテーブルを一つベランダに出したスペースが空いている
「そこでやってみたら?」
彼は嬉しそうに、「いや岩手の人にみて貰いたい。多くの人に…」と言って並べ始めた

青森、むつの人だと言うが、東北人には無いネバリゴシと饒舌である
週末の土日の二日間、彼は車に寝泊まりして店に通った
二日で土鍋が一つ売れただろうか?
しかし、買った客は
「今まで探し求めていたモノがここにあった」と感激して帰って行った

日曜日の夕方、店に戻ると綺麗に片付いていた

「”だんなさんに、よろしく”と言って帰った」と魔子様は言う
そして「亡くなったひとり娘にそっくりだ。年まで一緒。まだ傷が癒えていない」
とレジにいる娘のことを言って
「これを記念に…}と作品を置いていったと言う
場所を貸してくれたお礼のぐい飲みとともに…

なんとなく腑に落ちないのだが…

「この辺で陶芸をやっている人」という近づき方
「亡くなった娘に良く似ている」という去り方

なんだか作り話を聞いているような…
まぁ、ものが有るからいいかぁ〜