「ちょっと相談がある」と電話がかかってきた
ときどき思い出したように店に来る人だ。
バタバタしているが、いつも邪険にしているので、きちんと向き合って話してやろうと
「時間が無いが…、少しだけなら…」と言って、向き合った

「隣の家でチャボを飼っている。それを手伝っているが、譲ってくれるという、養鶏を勉強しているので自然養鶏をやってみたい」

と言う相談だった。
即座に「無理です。貴方にはできません」と答えた
 

若い人の相談に乗ることがよくある。
「有機農業をやりたい」「農業の豊かな暮らしを…」
そういう人には「最初に自然養鶏に取り組みなさい」と教える

自然養鶏は循環型農業の基本である
養鶏→卵→販売→とりあえずの日々の現金収入
鶏糞→畑→野菜屑→鶏の餌
鶏糞→水田→稲藁→敷き藁
鶏糞→水田→米→籾殻→敷料

自然養鶏を基本に、さまざまな展開が考えられる
それよりも何よりも一番に日々の現金収入である

野菜は、一番早い奴で葉物は30日前後かかるが、収穫したそばから腐敗が始まる
稲作は、それこそ半年だ
畜産は二〜三年しないと金が稼げない

養鶏は雛が生まれて180日すれば、毎日毎日産卵してくれるし
日々訪問しながら売っていくことで野菜や米などの販売も可能となってくる

そういう事から若い人には自然養鶏を勧めている
しかし、それには問題がある
安定した飼料の供給と、安定した環境の創造である
鶏は神経質である。「つっつき」と言ってストレスを感じると他の鶏の尻をつっついて殺すのである
今の養鶏場は、1羽1羽ケージに入れて大量飼育管理をする
そのときに、くちばしを焼き切る

自然養鶏では、坪10羽をめどにして密飼をしない
日中は、陽光をたっぷり浴びさせる
青草をふんだんに食べさせる

などなど如何に自然の中でストレスを浴びないように育てるか
が基本である。そうすると産卵率が悪い
産卵率が悪いと商品卵率も悪くなる

 

そうして出来てきた卵を一個一個磨いて売るのだが…
売れたときに卵が少ない。売れないときは卵が余る。こういう受給のギャップというリスクがある
だから1個50〜60円前後で販売しているのである
(大手が、赤玉をまるで自然卵のようにして高く売っているが、それは「まやかし」である。
また○○卵と言って何か効用があるような卵のように書いてあるが、それはエサに少し混ぜただけの卵である)

だから自然養鶏が順調に軌道に乗るには、創意工夫の末に数年はかかる
ところが相談にやってきた人は68歳だ
「年金で生活をしているが,借金もあって…この年になって働くところはない。月になんとか10万稼ぎたい」という
読んでいると言う本が二冊。「中島正」「菅野芳秀」の著書だ。本を読んで出来るほど甘くはない
その本を読んで成功している人、失敗している人、様々いる。

要するに、その人の取り組む姿勢だけなのだが…