魔子様が叫ぶ
「一個でも良いから届けて…。”もう無い”と言っていたから…」

北国の冬は、暖房が途切れたら、もうお終いです。
自宅も高断熱の構造になっているとはいえ、朝キリッと冷えると温まるまで時間がかかる
 いつも歩いて来る元気なお婆さんは、松園の一角で一人で住んでいる。
秋になると大量に「炭」を買いに来る。そして届ける。
困ったことに、耳が遠い。
こちとらは、声が出ない。
でかい音量でテレビなどつけていると、玄関でいくら叫んでも、出てこない
しかたがないので、すごすごと「炭」を置いて、後で回収する

今回も、炭を物置に置いて…

おばぁちゃんは、出てくれるかな?
と思ったら、家の中は静かだ。
ありったけの声を出して

「おばぁちゃん!」

と叫ぶ

でてきた。でてきた。

「おばぁちゃん、とりあえず炭を一袋もってきたよ」

おばぁちゃんは、何かに驚いたような顔をして、あちこちを探しながら…

「財布を何処に置いたか…。お金はあるんだよ。何処に財布を置いたか?お金はあるんだ。最近、物忘れがひどくて…」

と繰り返しながら…

また支払いが…