「突っ込んでみてから。判断しよう」と
ひげ面の医者は上着を脱ぎながら言った。
上着の下のTシャツ半分には、”竹藪で吠える虎”が刺繍されていた。
”阪神ファンか?”

胃カメラを突っ込んで食道の状況をみて、一番大きい径のバルーンをやるかどうか?
判断しようというのだ。

と言いながらも、突っ込んだ瞬間に
「バルーン! 3気圧」「4.5気圧」と看護婦に言い、
その数字はだんだん大きくなっていった。
ちょっと胸のあたりが圧迫感が、してきた。

大きいのを広げている割合には、モニターに映っている画像は血液の流れが見えない。
”これは上手くいったかな”と思っていると
「さぁ〜引き抜くぞ〜」と言う医者とともに胃カメラが口から引きづり出されてきた
途端に…
徐々に、引き抜いた食道の後から血潮が広がって…
流れるように溢れてきた。
医者は、「トロリン2本。もう1本」と次から次へと止血剤を言う

「う〜ん止まらないなぁ〜」と嘆きながら…
「ちょっと休むか?」と言ってカメラを抜いて5分待ち

再度、カメラを突っ込んで「止血剤1本、もう1本」
「うーん、困ったなぁ〜」と言いながら、カメラを抜いて
「ちょと外来へ言ってくる。少し時間を取ってから…」
しかし、そんなに出血というのはすぐ止まる物だろうか?
少し時間をおいて徐々に止まるものだが…

先生がいなくなると、モニターをみていた看護師や助手のような周りの人も、
暇そうに回りを歩き始め、椅子に座ったり、もじもじと腹を掻いたり、頭を掻いたり
こちとらも診療台に横になりながら、周りの人を観察している。

なんとなく気まずい雰囲気が漂っているところへ、医者が帰ってきた
落ちていたおしゃぶりを、”ひょい”と口に咥えると
「おう、もう慣れてるね。自分で咥えた」と言い、回りから笑い声が起きた
こちとら、はよ終わらせたいと、拾って咥えただけだが…
カメラは、血が止まりかけている食道をとらえモニターに映し出していた
医者は止血剤をもう一つ流し込み、胃カメラを抜いた。

そして「今日も絶飲食。申し訳ないね。しかし、止まらないね。」

という訳で朝から絶飲食の一日で、ますます体重が減る
 

娑婆は、熱そうな一日
6人部屋で4人になったのが、明日は二人退院である。
もう長老になってしまった。

病院の裏の高校では、骨折だろうか松葉杖を抱えた女生徒が迎えに来る車でも待っているのだろうか?
熱い日差しを除けるように日陰に入って