「久しぶりに、先輩に会いたいのですが…」と電話がかかってきた
先輩後輩という親しい間柄ではないが、昔いた会社の後輩である
2年ほど音沙汰が無かったが「今度、日本に帰ってきた。」と言う

以前にいた会社で、同期入社の奴が
「新しい会社を作ったので、会ってやって欲しい」と電話がかかってきたのが、もう3〜4年前になるだろうか?
なんでも肥料の販売会社らしい。電話がかかってきたのは、その肥料販売会社の社員である。
東京から足を運んできたので、とりあえず肥料を置いて販売している
有機素材を使用した一発肥料である。


  一発肥料や一発除草剤という、「一発」という名前がついているのは、「一回で済む」という意味である
  肥料は、元肥や追肥など何回か分けて施すが、それを一回で済むように化学肥料や有機肥料など、短期で効果を発揮する物と長く効くものと組み合わせたものである
  除草剤は、春先に出てくる雑草と、夏に出てくる雑草が違う。そのために除草剤を二種類組み合わせるか、強力な奴を一回やるだけで済むようにしてある
  作業が簡便である。という省力化のためであるが…
  肥料にとっては、天気に併せて肥効を効かせることができない。
  しかし、家庭菜園ていどだったら、難しい肥培管理をしなくて済むから、楽しむ農業ならそれで良い
  除草剤は、「一回しか除草剤をかけておりません。通常より少ない低農薬です」と言いながら、毒性の強い除草剤だったりする

そんな「有機一発肥料」を開発したと言って持って来てから、数年が経っている
「久しぶりに会いたい」というのであるが…
話は「インドネシアに魚を買いに行っていた、イチゴ農家が魚粕を欲しいというので…」
日本の魚は、ほとんど塩漬けにしてあるので、日本の魚粕は塩分が多い
インドネシアも魚を捕ると、コンクリートに魚を広げて塩を振って水分を出し、乾燥させて輸出する
これまた塩分が多い「煮出して乾燥させろ」と言ってあるのだが…
「そこで、良い魚が一杯あるので、工場を造った。そのために短期間の予定だったが、二年も向こうに行っていた」という事であった。

肥料は、ほとんどが原材料は輸入である
植物の三要素と言われる、窒素・リン酸・カリがある
窒素は、空中のの二酸化窒素から、石油や天然ガスを利用して生産する
リン酸・カリは、大体が鉱物資源リン鉱山やカリ鉱山から掘り出して精製する
日本で、化学肥料の自給は出来ない。
化学肥料が作られていない時代は、人糞尿や草木灰の有機質肥料を使用していた
ところが人糞尿は下水道が完備され、草木灰も乾燥させて焼却する手間を惜しんで、無くなった
今は、有機質肥料や飼料も、ほとんどが輸入である
大豆粕・菜種粕・グアノ・パームアッシュ・魚粕・とうもろこし・海草・カニ殻・骨粉…

つまり国産の農産物と言いながら、肥料はほとんど海外産である。
そして農業機械をつくる鉄鉱石と、石油から由来するプラスチック類やゴム類
それらを動かす重油は、当然のことながら全て輸入である
また野菜の大規模農家で働く人は、中国やフィリッピンの人々である
おまけに種は、ほとんど海外農場で育種している。
はたしてそれは、国産と言えるのだろうか?

今、TPP論議が、かまびすしい。
某外務大臣が「1.5%の人のために98.5%の人々が犠牲になっている」と言うが
1.5%の人が、カロリーベースで40%、金額ベースで70%弱の食糧を作り出しているすばらしい仕事である
しかし、それが成り立っている基盤は、あまりにも脆弱である。

関税撤廃で輸入資材は、値下がりするだろうが…
結局は、地代と人件費は、東南アジアに太刀打ちできない
結局、日本の農業は壊滅するだろう
そして98.5%の人々は、東南アジアのコメや野菜を食べるハメになる
それでも金が稼げるから良いと想う人は、それで良いだろう
あくせくと金を稼ぎ、ふと気がついたら、帰るべき故郷は荒れはて
トムヤンクンスープを飲み、タイ米を食べ、杏仁豆腐をすする日々をおくるだろう

そして1.5%の人は、自給的農業の世界で、自家製味噌の味噌汁に炊きたてのご飯と美味しい漬け物をたらふく食べて、ゆたかにくらして行くだろう

そんなことを考えていると彼は
「宮城の農家で貰ったコメですが…」とコシヒカリを置いていった