店でパソコンをいじっていると、背広を着た五十前後の男がノートを抱えて
「すいません、ちょっと良いですか?」と話しかけてきた
真面目そうな…気の弱そうな…その男は

「あの〜こういう物ですが…」と名刺を差し出し
「盛岡で居酒屋を三軒ほどやっているのですが、
野菜が高くて…八百屋ではなく地元のものを直接仕入れたいということで、
商品の値段を調べに来たのですが…。」という

日々変わる値段を書き留めていって、どうするのだろ?と思ったが
「いいですよ。どうぞ…」と言うと嬉しそうに商品の陳列棚に戻っていった。
 

小一時間ほどかかって二軒ほど配達に行き、戻ってきた
その男は、まだいた。
そして近寄ってきて、またまた
「ちょっとお話を伺ってよろしいですか?」と言って座った。
「実は今度、仙台と東京に店を出すことになり〜上司が
”今度の店は地産地消で行くから、この値段を調べてこい”
と言われて…」
ちょっとのぞき込むと、様々な野菜の一覧表が並んでいた
「あの〜、地産地消は揃いませんよ!」
「お店に玉レタスが無いのですが…サニーレタスも…グリンーカールも…」

「あのね!トマトや胡瓜と違って、レタスは一度採ったら、次は出てこないの!
そういう物は、レタス専門の大型農家でないと、毎日収穫出来ないの!
専門の大型農家は、連続して収穫出来るように、種を蒔く時期を考えて何回にも分けて育苗するの!
そういうところから仕入をするなら、ケース単位で引き取らないと…
そういう農家は、場所が遠いから運賃がかかるの!
結果として高い物につきますよ
だいたい、岩手で野菜が揃うのは三ヶ月しか無いんですよ
トマト・胡瓜・茄子などは6月末から9月までだし…
普通の農家は、レタスや大根、キャベツ、白菜は春と秋の二回播くだけだから…
それを採ったら、お終いですよ」

そのおじさんは、一生懸命ノートに書き留めて、
「勉強になります。上司に伝えます」というが頼りなげだったので
「上司を呼んできなさい。話してあげるから…、
信頼できる八百屋か仲卸に、”岩手産のものを中心に揃えてくれ”
と言ったほうが、手間がかからなくて良いですよと…」

外食産業は、メニューが固定化している
それに合わせて食材を調達するのだから、地産地消は無理である
冬場にトマトが必要になり、年中レタスが使用されている
それなのに「地産地消レストラン」などとうたうと、イメージが良くなると思っているのだろう

以前、地産地消のシンポジウムで小生がコーディネーターになり、外食産業の会長に質問をした
「外食産業で地産地消は無理でしょう。安い物を使わないと採算が合わないのだから…」
その会長は真っ赤になって
「そんなことはない、地元物を使っている」と反論したが…
その従業員は
「原価率をいかに下げるかばかりで,評価される」とこぼしていた