岩崎家では、”いぐね(居久根)”の樹を切っている(いぐね=屋敷の回りの防風林)

「もったいないね〜。何年経っているの?」
「爺さんの時代だから…60〜70年がなぁ〜」
「風が吹くと倒れるがら、心配で…」と言葉少なく淋しそうに善隆さんはつぶやいた。

                  

                 

                

 

もうあと少しで、すべて伐採してしまう。
奥さんは、

「毎年春になると木が倒れて…、やぢだから…虫も食ってるし…倒れやすくて…」

                  

ここは「生出谷地(おいでやぢ)」と呼ばれている土地である。
岩手山の伏流水が自噴している。そのわき水の場所を「湧口(わっくち)」と言い、
自噴したわき水が、最初に岩崎家の田んぼや庭を流れて行く。
おかげで湿った土地(谷地)と呼ばれて湿地帯の土地である。

                 

岩崎家の敷地の真ん中を、年間を通して15度のわき水が勢いよく流れ
春は種籾を浸漬し、夏はスイカを冷やし、秋は大根を洗い、冬は長靴の外から冷えた足を温める。

そして岩手山から吹き下ろす風は、稲の間を吹き抜け病害虫を寄せ付けない。

良いことも悪いことも、受け入れてこの土地で暮らすと言うことなのだろう。

善隆さんは「伐採賃と切った樹は、相殺だ。なんぼにもなんねぇ〜」と言いながら
風で飛ばされた屋根瓦の修理をしていた